ひとつ前の恋はすぐに終わりを迎えた。出会ってからすぐに意気投合し盛り上がる二人は大体短命に終わる。燃え上がる勢いが激しいほど燃え尽きるのも早いのだ。
初めの頃は連絡も頻繁にあり、会う頻度も多い。そんな彼に恋をしたはずだった。「こんな僕とつきあってくれてありがとう」と言う彼に対して「こちらこそありがとう」と答える。「そのままの君でいてくれるだけでいいんだよ」そう言ってくれるほどの優しい彼だった。いつの間にか変わってしまい、そのままで居ることができなかったのは私だった。
そのままの私を愛してくれているはずの彼を疑い不安に駆られ追い詰めてしまう。少し連絡がないだけで問い詰め電話で話し合いという名の糾弾が始まる。ありのままを愛してくれる彼に対して、私はそのままの彼を愛することが出来なかったのだ。
どちらかが大人でないとその恋は終わってしまう。私たちは二人ともまだまだ子供だった。恋という最上級のコミュニケーションをとるためには精神的に大人でないといけない。どちらかが子供のままで成長しなければいずれ別れを迎える。
そのままの自分を愛してほしいと願うのに、そのままの彼を愛することができなかったのか。少し連絡が来ないだけで不安に駆られてしまうのはなぜだろう。その根底には過去に置いてきた問題が隠れていることがある。
私の場合機能不全家族で育ち人間関係を間違えて覚えてしまったのだ。親にもらえなかった愛情を必死に彼に求める。連絡を強要したり自分の思い通りにしようとするのは一種の試し行動ともいえる。心の底でこんな私は愛されないという刷り込みがあるため、愛されないようにと動いてしまう。これでも私を愛してくれますか。と心の底で叫びながら彼の愛を求め、答えてくれなければほら見ろと私は愛されないんだと自分の疑いが正解になる。
彼に親の愛情をもとめても彼は私の親になることはできない。対等な関係であるからこそ恋愛が成立するのだ。恋愛がいつも上手くいかない一因に家庭環境が関係していることに気づいたとき、私は育った環境を恨んだ。自分がおかしいことに気づき自分自身と向き合うときが来たのだ。頭がおかしくなりそうになりながら、生まれて初めて普通になりたいと願った。
私は私と向き合ったときもう一度産まれ変わる。蓋をして置いてきた過去と向き合って初めて本当の自分が始まるのだ。自分と向き合うことはとても苦しい作業で辞めてしまいたくなることもある。逃げてきた過去の自分が追いかけてきて苦しめることもある。そんな過去の自分も認めて愛して初めて自分になることが出来る。
今の彼にも過去を隠して付き合っていたが、とうとう限界がきた。すべてをさらけ出しそれでも受け止めてくれる彼のように優しくなりたい。愛してほしいと叫ぶことはやめて落ち着いた恋が出来るように私はもう一度産まれる。
コメント